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軽井沢の追分日記(古い日記)

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終電車ならとっくに行ってしまった/2011.02.06記



つくづく記憶の回路は摩訶不思議な気がする。

今朝起きて、いつものように半分寝ぼけながらコーヒーをいれて、新聞のページをめくって見出しをざーっと眺めていた。

書評欄にフジモトマサルという人の「終電車ならとっくに行ってしまった」という漫画について、河合香織という作家が書いている書評が眼に留まった。

著者も評者も二人共知らないが、その漫画の絵がなにか気になって、なんとなく読んでいた。

すると、もう何年も前のすっかり忘れていた出来事が突然まざまざと甦ってきた。
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その日は確か親しい友人と調子に乗って飲んでいる内に、ついつい終電のことを忘れてしまっていた。ふと我に返って時計を見ると、もうぎりぎりのきわどい時間だった。

慌てて友人と別れて東京駅に着くと、もう終電はとっくに出て行ってしまっていた。

そうか、やはり間に合わなかったか・・・。今日は仕事で飲んだのではないので、タクシーチケットの持ち合わせはなかった。すると、山の手線の池袋終点の終電が間もなく来るとのアナウンスが聞こえた。

それじゃあ、とりあえず池袋まで行って、そこからタクシーに乗って浦和まで帰ることにした。なにしろ、東京駅からだと一万円台半ばになるからな。
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池袋駅で降りてはみたが、池袋にはほとんど来ることもないので、タクシー乗り場がどこなのか、どちらの出口がいいのかさえ皆目判らない。

まあ、どちらの出口でもいいから、とにかく出てみれば乗り場が見つかるだろう。ということで、出口を出て、当てずっぽうに歩いていた。

すると、どこからか “ 間もなく大宮行きの深夜バスが出ま~す!! ” と叫ぶ声が聞こえてきたのだ。

その叫び声の主に、大宮に行くんだよね?浦和にも停まるの?いくらなの?何時発?チケット買うの?乗り場はどこ?と矢継ぎ早に質問した。

乗り場もすぐ近くだし、なんと確か二千円ほどの料金だった。それに、どんな感じなのか興味も湧いてきた。

よし!、乗ってみよう。
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教えられた通りチケットを買い求め、バス乗り場に向かった。夜目なので判然とはしないものの、予想もしない大型観光バスだった。

観光地をいろいろ散々巡ってくたびれた観光バスだったのかも知れないが、酔っていたせいかも知れないが、その時の私の眼にはそれはとても立派な観光バスのように見えた。

ステップを登り、運転手に浦和までと言ってチケットを渡すと、運転手は浦和ですねと言いながら停車場所ごとに並べたのであろう浦和のところにそのチケットを重ねて置いた。

座席は、そこそこ埋まっていて全員が男、おじさんばかりだ。その大半がもうすでに熟睡している。私の乗り込んだ後にも数人が駆け込んできて、いよいよ出発。

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出発時、運転手のアナウンスがあった。驚いたのは、その声になんとエコーが!掛かっているのだ。さすが観光バスだ。

そのエコーにのせて、間もなく出発、どこどこに停車等の声がとても丁寧で柔らかく、気のせいか、今日も一日お疲れ様というニュアンスさえも伝わってくる。

もうほとんどの乗客は寝ているので音量も絞っていて、寝ているのを起こさないような配慮さえ感じ取れる。

アナウンス本来の目的を考えると、矛盾する配慮とも思われるが、そうは思ってもなにかとても好感が持てる。

これは面白い、もう寝てなんかいられないな。しばらく成り行きを観察してみよう。
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こんなバスがあることを脚本家の山田太一さんに教えたら、きっと今という時代を活写したほろ苦い味のドラマに仕立ててくれるかも知れないな・・・。

例えば・・・。

主人公は50代前半、会社でのゴールもはっきりと見えていて、今の自分が昔望んだ自分の姿とは全く違うことをいやと言うほど承知している。

或る日、得意先の接待がついつい長引き、終電を逃してしまう。

主人公は偶然に深夜帰宅バスがあるのを知って、深い疲労感を感じつつも、つい微かな冒険心が働いて乗ってみることにした。

出発ぎりぎりに乗り込むと、すでに乗客の大半は寝ている。向こうに誰も座っていない席を見つけ、酔っているのでよろけそうになりながら通路を歩いて行くと、通路に伸びた足を気が付かず踏んでしまう。

咄嗟に「あっ、すみません!」と低い声で謝ると、寝ていた男は「ん、ん~ん。」と寝ぼけたように答えた。

その自分と同じ年格好の男が横になって占領している二席と通路を挟んで反対側の席に座るとやれやれ、気が緩んで一日の疲れがどーっと出て、急に眠くなってきた。

すると、先ほど足を踏んで謝った寝ているとばかり思っていた男が声を掛けてきた。

「 どちらまでですか?」

それが、彼との最初の出会いだった。それが縁で、彼との妙な付き合いが始まった。

お互い、年格好や境遇が似ていたせいかすっかり意気投合、遅くまで飲んでは深夜バスで帰宅することも時々あった。

それから2年あまり後、突然彼から連絡が途絶え、主人公は彼から聞いていた勤め先を訪ねて行く。

すると・・・。    
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まあ、ざっとこんな感じの粗筋かな、と思いつつ、流れる深夜の夜景を時々見ては、今どの辺か確認しようとするがよく判らない。

車内は、私以外の乗客は皆すでに爆睡していて、あちらこちらから鼾が聞こえてくる。ドラマになりそうなことは何も起こりようがない。

深夜帰宅バスはひたすら終点の大宮へと向かっている。

すると、運転手が 「 戸田(だったかな?)ですが、ここで降りる方のチケットを3枚いただいてますが、2名の方しか降りていません。どなたかお降りになる方はいらっしゃいませんか? 」 と言った。

推測通り、酔っぱらいおじさん相手だから、きめ細やかな対応をしているのだ。その声にはやはりエコーが掛かっていて、トゲのないまろやかな感じだ。

車内に反応はない。 また運転手が同じことを繰り返す。親切で丁寧なものだ。しかし、反応はない。

「では、出発させていただきます。」

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また、バスは走りようやく私の降りる浦和に近づいて、間もなく浦和であるとのエコーのアナウンスがあった。

バスは停まり、降りようと通路を前方に進むと、何やら乗客の一人が運転手に話している。

「 戸田、もう過ぎちゃったのー!」と乗客。

「 ええ、戸田の停留所で何度もアナウンスしたんですけど・・・、すみませんが。」 と運転手。あくまでも丁寧な対応で、その乗客への同情さえも感じられる。

「・・・、浦和か・・・。」と乗客はつぶやき、ステップを降りて行く。

続いて私も降車、さすがに3時近く、駅前はひっそりと静まり返って、どこか冴え冴えとしてまるで別の駅のように見えた。

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それだけの話しなのだが、なにかとても新鮮な経験だったように思われる。

あれ以来、二度とあのバスに乗ることはなかったが、今となっては、あの日の乗客、私も含めた全員がなにかとても愛おしいような気がする。

あの日乗り合わせた乗客の多くは既に定年退職を迎えたことだろう。

世の中、今やワーク ライフ バランスなんてスローガンが掲げられるようになって、喜ばしいことである。

あの深夜帰宅バスは今も走っているのだろうか。





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# by koh-nikki | 2015-09-05 15:38 | 心に残ること

あと何回のワールドカップ/2011.01.30


あと何回のワールドカップ/2011.01.30_c0186311_19133877.jpg


やりましたねー!!

昨年の南アW杯での決勝トーナメント進出で、大きな成長を遂げた日本代表は、今回のアジアカップ優勝で世界のレベルにさらに一歩近づくことだろうと思います。

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私の父は、あの世代では珍しく若い時からサッカーをしていましたが、私の子供の頃に日本がワールドカップの本大会に出るには50年いや100年経っても無理かも知れないとよく言ってました。

メキシコオリンピックで銅メダルを獲ったあの輝かしい釜本や杉山の時代でさえ、サッカーは野球とは比べ物にならないほどまだまだマイナーなスポーツでした。

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私が学生だった頃、ブラジルのあのペレが所属するサントスFCや英国のアーセナルなどが時々来日してましたので、日本代表との親善試合を観に国立競技場によく行ったものです。

そういう試合で、日本代表の不甲斐なさにイラつきヤケッパチになったスタンドから必ず飛んだ定番の野次があったのを思い出します。

“ 長島(茂雄)出せ~!!”

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ところが、Jリーグの設立等であれよあれよと言う間に日本のサッカーは著しい進歩を遂げ、1998年にはフランスワールドカップ本大会に出場するまでになりました。

テレビでその本大会出場を決めた試合を観終わってから、ひょっとしてと思って、滅多に電話などすることなどないのに、深夜にもかかわらず電話を実家にかけてみました。

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すぐに父が出ました。

「 やったね! 」と私が言ったら、「 ああ。 」とだけしか父は言いませんでしたが、その声に歓びを感じたのを覚えています。

その次の大会は2002年の日韓大会でしたので、サッカーが生涯の唯一の趣味である父のためになんとか良い席を確保したいなと思っていました。

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ですが、父は2000年の末に、日本代表の本大会でのプレーも、21世紀も見ること無く亡くなりました。

私ももう還暦、よくてもあと20年程しか生きないでしょう。ワールドカップで言うとせいぜい5回程しか観れないのだなあと思うと少々寂しい気もします。

なんとか生きている内に、日本代表の勇姿をワールドカップの決勝戦で観たいものです。そこまでは無理としても、岡田前監督が標榜していたベスト4の日本代表のプレーをこの眼で見てみたいものです。

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多分父は還暦の頃にはまだ、自分がワールドカップの本大会での日本代表戦を観るなど夢にも思ってもいなかったでしょう。

ということは、最近の日本代表を見ていると、私がこの眼で決勝や準決勝での日本代表を見ることも決して不可能ではないな・・・。

そんなことを想わせてくれる昨夜のアジアカップ決勝でした。




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# by koh-nikki | 2015-09-05 15:21 | サッカーの話

今日は大寒/2011.01.20記



今年の冬は寒い日が多くて、春が待ち遠しくてならない。

北国育ちの私は、暑すぎるのは全くダメ、かと言って寒いのが得意な訳ではまったくない。歳のせいか、以前より暑いのも寒いのも、どちらもしんどく感じるような気がしてならない。

今日は暦の上で大寒。

昨日のブログの私信相手の元同僚から、もっと句を披露してほしいと所望されたので、さっそく今朝の一句を詠んでみた。

この感じ、女性や男性でも長髪の人には解らないでしょうが。



            
     大寒と刈り上げが告ぐ床屋あと   子瞳




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# by koh-nikki | 2015-09-05 15:16 | 日々のこと

春を待つ/2011.01.29記



もう何度か愚痴のように繰り返しているが、今年は寒い日が続いている。春を迎えるには、これから2月という最大の難関が控えている。

そのひと月さえ乗り越えれば・・・と思うと、ほんとうに春が待ち遠しい。

想い起こすと3年前の3月下旬に当地に越して来たので、あれからもう丸3年近くになる。あっという間だったような、とても長かったような、なんだかよく判らない。

この間、思い返すと劇的なことはなくても、ほんとうにいろいろなことがあった。
              ●

当地に来て間もなく、家の庭の予定地前の道路を愛犬連れでお散歩されている方から声を掛けられた。

「つかぬ事をお訊きしますが、こちらは何かお店をなさるんですか?」それがKさんとの最初の出会いだった。

その後Kさんには、病院のこと、この辺の美味しい野菜をはじめとする食料品のお店のこと、渋滞時季の裏道等々、様々な生活に必要な情報を教えていただいた。

まず最初は慣れるためにと電動のチェーンソーや斧等の薪割り道具もお借りしたり、その他何かにつけてお世話になりっぱなしだ。

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秋口に、連日のように猪が通った痕跡があり、庭の中にまで侵入しているようだったので、Kさんに頼んで愛犬ジョイスに歩いてもらって、猪が嫌うらしい犬の臭いを着けていただいたこともある。

そのジョイスは昨年天寿を全うして亡くなった。

ジョイスがいなくなった当初、お一人で散歩をされるKさんは急に元気がなくなったように見えた。

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ある時は、そろそろ閉店時間が近くなった夕刻、店内のテーブルの上に突如大きな猿がいた。

室内という非日常的な空間で間近に見る猿は、とても大きく、ふてぶてしく見えた。

その時も、Kさんに車に同乗してもらって、一緒に撃退用のガス銃を買いに行った。

そしてこの冬は連日のように雉子のお出ましだ。ちょっとうら寂しい冬の景色の中で、似つかわしくないほどに、生命が輝いている。

もう間もなく丸三年だ。



     犬が猿が雉子も来たりて三春哉   子瞳




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# by koh-nikki | 2015-09-05 15:09 | 日々のこと

私信ですが/2011.01.19記



昨晩は前日の深夜のアジアカップ観戦のせいか疲れて早々に寝てしまった。

そのため、珍しく早くに目が覚めてふと見ると、携帯が鋭い光を点滅している。

見ると、かつての戦友みたいな元同僚からのメールで、どうしたことか私の最近の俳句を披露してほしいとのこと。

俳句は最近ずっとさぼったままなので、それでは早起きついでにと思って捻ってみることにした。

まあまあの出来かなと思うので、メモの意味で、以下に返信を兼ねて記してみた。
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私信ですが/2011.01.19記_c0186311_1147381.jpg
    後日妻がばっちりの写真を撮ったので、後出しですが載せてみました。 


拝啓

正統派のご隠居暮らし、いかがお過ごしですか。

当地は連日寒い日が続き、一昨日降った雪がまだ残っています。

山茶花も寒椿もない冬枯れの色味のないちょっと寂しい景色ですが、今年はなぜか庭に鳥達が例年になく多く来ていて、心を和ませてくれています。

雉子や山鳩など大型の鳥もほぼ毎日のように庭をヨチヨチ歩いていて、間近に見るオスの雉子の美しさは何度見ても感動させられます。

小鳥も四十雀、五十雀、山雀などのご一行様がジャンジャン来て、ヒマワリの種を入れた餌箱の周辺の枯れ枝に止まって、代わる代わる食べる機を窺っています。

では、そんな日々の中、今朝の即興句を四句。



       枯庭に大輪の咲く雉子一羽    子瞳



       君こそは神の手なるぞ雪の雉子



       慈悲心も寒夜に捨てる薪の蜘蛛



       確定申告の季節を迎えて
       雪に雉子明日にしよう鬼が島     



こんな調子でやってます。

生活のリズムの変化にもそろそろ慣れてきたかと思いますが、そちらもこれから寒さが厳しくなる時季ですので、くれぐれもご自愛ください。
                            草々




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# by koh-nikki | 2015-07-28 23:52 | 日々のこと